DX推進計画
1. 経営ビジョンとDXの位置づけ
タイシン工業は、
「建設業で人材育成の基準をつくるリーダー企業」
になることをビジョンとしている。
人口減少、技術者不足、長時間労働、安全衛生、環境対応など、建設業を取り巻く環境は大きく変化している。
同時に、クラウドや生成AIなどデジタル技術の進化により、現場の見える化や働き方改革、生産性向上のチャンスも広がっている。
当社は、こうした 社会・競争環境の変化をリスクと機会の両面 から捉え、
現場・管理・経営・人材育成をデータでつなぐことで、
現場の安全と品質を高める
社員と協力会社の働き方を改善する
建設業を若者が憧れる業界に変えていく
ことをDXの目的としている。
2. DX戦略の全体像
2-1. 既存ビジネスの強化・改善
タイシン工業のDXは、まず「今ある事業を強くすること」に軸足を置く。
出面・原価・売上・粗利を日次で把握できる仕組みの構築
現場管理表、年間収支表などのスプレッドシートをMicrosoft 365上で一元管理
現場ごとの利益率を見える化し、赤字兆候を早期に発見
協力会社への支払・請求フローのデジタル化によるミス削減
これにより、「月末まで粗利がわからないストレス」からの解放 と、
管理職が数字を意識した現場運営を行える体制を整えている。
2-2. 将来のビジネスモデル変革
中長期的には、以下のような変革を見据えている。
協力会社向けポータルサイトによる情報共有・安全教育・請求連携
人材育成・マネジメントのノウハウを活かした教育サービスの展開
データに基づく工事原価・生産性分析により、元請・協力会社双方の利益を高める仕組みづくり
DXは、当社の経営方針転換や新拠点展開にも耐えられる柔軟なビジネスモデルを支える基盤として位置づけている。
3. 社会・業界課題への貢献
当社のDXは、自社の効率化にとどまらず、次のような社会・業界課題の解決にも貢献することを目指す。
若手が成長しやすい教育環境の整備
現場の安全管理・労働時間管理のデータ化による事故・過労の未然防止
協力会社と一緒に使える仕組みにすることで、業界全体の生産性と品質を底上げ
将来的には、協力会社ポータルや研修コンテンツの共有等を通じて、
「育成を学ぶならタイシン」 と言われる存在を目指す。
4. データ活用・データガバナンス・連携方針
4-1. 経営陣のデータ活用スタンス
経営陣はデータを重要な経営資産と位置づけ、
現場別・元請別の粗利
拠点別・年度別の収支
協力会社別の取引状況
などをもとに意思決定を行う。
「感覚ではなく数字で語る」ことを基本姿勢としている。
4-2. データの発掘・整理・管理
以下のようなデータ基盤を整備・統合中である。
出面表・現場管理表・変動損益計算書・年間収支表等をMicrosoft 365上で一元管理
現場単位・担当者単位・元請単位で粗利や生産性を集計
協力会社・仕入先の請求情報を月次・年次で集計
名刺管理システム SANSAN による顧客・関係者データの整理
今後、これらをさらに整理し、データガバナンス方針を明文化 するとともに、
必要に応じてサプライチェーンとのデータ連携を強化していく。
5. DX推進体制・組織・役割・権限
DX推進責任者(CIO相当):代表取締役 櫻田
DX実行責任者:相模原支店長 水越(情報セキュリティマネジメント・ITパスポート保持)
DX推進部署:管理部(経営企画・総務・情報システム機能を兼務)
現場リーダー:各現場管理者(出面・原価データの入力と活用を担当)
外部アドバイザー:株式会社フォーバル(IT環境整備・セキュリティ・DXロードマップ支援)
DX推進責任者は、経営会議・幹部会においてDXに関する方針決定を行い、
DX実行責任者は日常オペレーションと施策の進捗管理を担う。
各人が主体的に動けるよう、
現場管理者にはデータ入力・活用の権限と責任を付与
管理部にはシステム選定・運用ルール策定の権限を付与
DX施策に関わる提案については、現場からも直接経営陣に提案できるルートを確保
している。
6. DX投資・予算・意思決定方針
DX関連の投資は、従来のIT保守費とは別枠で管理し、
クラウド利用料・セキュリティ対策費
生成AI・自動化ツールの導入費
人材育成・研修費用
外部アドバイザーへの支払
などを中期計画に計上している。
投資判断においては、短期的な定量ROIだけでなく、
「情報の見える化」「ミス削減」「働き方改善」「人材育成」などの定性的な効果 も重視し、
DXに投じる資金を経営にとって必須の投資と位置づけている。
7. ITシステム環境・サイバーセキュリティ方針
7-1. 主なITシステム
Microsoft 365(メール、Teams、SharePoint 等)
サクサ ファイルサーバー(社内ファイルの集中管理)
サクサ UTM(外部からの脅威対策)
TIFRONT セキュリティ HUB(エンドポイント保護・ゼロトラストの実装)
名刺管理:SANSAN
7-2. セキュリティ方針
全社員に情報セキュリティ教育を実施し、パスワード管理・メール運用等の基本ルールを徹底
UTM・エンドポイント保護・ファイルサーバー権限管理による多層防御
フォーバルによる外部診断・アドバイスを受け、継続的な改善を実施
情報セキュリティマネジメント有資格者を中心に、社内のセキュリティ窓口を整備
8. DX指標・ロードマップ・公表
8-1. DX指標
DX戦略の達成度を測るため、次の指標を設定する。
日次で粗利を把握できている現場の割合
出面・原価データの入力率(全現場のうち日次入力ができている割合)
管理職の粗利・原価理解度(年1回のテスト・アンケートによるスコア)
月次決算の締め完了日(前年対比の前倒し日数)
8-2. ロードマップと公表
これらの指標を毎年モニタリングし、
経営計画書および本DXページ、協力会社向け資料などを通じて公表する。
中期的には、
日次粗利把握率の高水準化
入力率とデータ精度の向上
決算締めの前倒し
を目標としている。
9. DX人材の定義・育成・確保
9-1. 必要なDX人材像
タイシン工業では、DX推進に必要な人材を次の3層で定義している。
基礎デジタル人材
メール・クラウド・出面システムを問題なく使いこなし、自分の業務をデジタルで管理できる社員
実務DX人材
スプレッドシートやMicrosoft 365を使って集計・自動化ができ、現場や部門の改善をリードできる社員
DX推進人材
経営視点でデータを読み解き、生成AIなど最新技術を含めてDX施策を企画・推進できる社員
9-2. 育成・確保の取組
ITパスポート・情報セキュリティマネジメント等の資格取得支援
管理職向けの粗利・原価・データ理解研修
生成AIやOfficeツールの活用トレーニング
中途採用におけるデジタルスキルの重視
フォーバル等の外部パートナーを活用した勉強会・伴走支援
今後は、デジタルスキル標準も参考にしながら、
社員のスキルマップを可視化し、DX人材の計画的育成 を進めていく。
10. 人事制度・配置・キャリア形成支援
デジタルスキルやDXへの貢献度を評価・昇格に反映していく方針を明示
資格取得やDXプロジェクトへの参画を評価項目に組み込み、対象者には役割拡大・配置転換の機会を付与
管理部やDX関連業務に、デジタル適性の高い社員を優先的に配置
社員の希望や適性に応じて、現場→管理部、現場→DXプロジェクトなどのキャリアパスを用意
これらを通じて、社員が 「自分のキャリアを自律的に選び取れる」 状態を目指す。
11. 組織文化・行動指針
DXを支える企業文化として、次のような行動を重視する。
主観ではなく、数字と事実で話す
「入力が面倒」ではなく、「入力しやすい仕組みを自分たちで作る」
失敗を責めるのではなく、小さく試して学ぶ姿勢を評価する
紙よりもデジタルを優先し、二重管理を減らす
現場からの改善提案を歓迎し、DXの題材として取り上げる
この行動指針は、経営計画書・社内会議・面談等を通じて繰り返し発信していく。
12. 外部連携・企業間連携
株式会社フォーバルとの連携によるセキュリティ・DX推進支援
元請企業・協力会社との情報共有・原価管理の標準化に向けた取り組み
将来的には、協力会社ポータルを通じて安全教育・工事情報・請求情報を一元管理し、
業界全体の生産性向上・労働環境改善に貢献することを目指す。
13. 最新デジタル技術(生成AI等)の活用
タイシン工業では、生成AIを現場の実務に落とし込むことに取り組んでいる。
社内文書・マニュアル・研修資料の作成支援
スプレッドシートやMicrosoft 365の自動化・関数設計の補助
DXプロジェクトのアイデア出し・たたき台作成
社長自身が先頭に立って生成AIを活用し、その実例を社員に共有
今後も、安全性と生産性を両立させながら、
最新技術を 「現場が使える形」 に落とし込んでいく。
14. ガバナンスと経営者コミットメント
経営会議・幹部ミーティングにおいて、DXの進捗・課題・最新技術情報を定期的に共有
経営者自らがDXページやブログ等でメッセージを発信し、社内外にコミットメントを示す
外部環境や技術動向の変化に応じて、DX戦略・体制・指標を見直し続ける
DXは一度のプロジェクトではなく、
「会社の動き方そのものを変えていく長期的な取り組み」 と位置づけている。
15. 経営者メッセージ
タイシン工業にとってDXは、
現場を監視するための仕組みではなく、 人が育ち、現場が楽になり、会社が強くなるための基盤 である。
私は、建設業で働く人たちが
胸を張って「この仕事が好きだ」と言える環境をつくりたい。
そのために、これからも
現場の声とデジタルの力を組み合わせながら、
タイシン工業らしいDXを愚直に進めていく。









